天空の楽園から岩稜の頂へ
- 2019/10/18
- 18:46
夏の登山ピークがひと段落して且つ、紅葉へはまだ少し早い人出のまばらなこの時期、予てより挑戦したかった北アルプス穂高岳登頂を目指してきました。
行程では初日に涸沢カール到着後に北穂高岳への登頂。翌日はザイテングラートから穂高岳山荘へ立ち寄り奥穂高岳へ登頂しジャンダルムを抜け天狗のコルから岳沢へと下山するルートを計画しましたが、2日目は悪天候に阻まれ奥穂へ登頂することなく上高地へと下山。
穂高連峰を一望する上高地隣接の小梨平キャンプ場にて一泊。ここも滞在してみたいキャンプ場ではありましたが、早朝に上高地へと着くバスに乗車することが多く、昼過ぎには上高地から離脱する計画でアルプス登山に勤しむ筆者にとっては上高地での一泊というのはなかなか贅沢な日程でないと叶わない計画でした。
今回は悪天候で思わぬ計画変更があったための怪我の功名がなんとも贅沢な北アルプス訪問記となりました!
:シーズン後半の上高地へ
2019/09/17~09/19 涸沢カール-北穂高岳


アルプス登山シーズンも後半を迎えた9月の3連休後、上高地へ向かいました。

9月ということもあり大学生たちは未だ夏休みなのでしょう。
バスタ新宿の込み合うターミナルを抜けバス乗車口へ。

長野県方面の登山にかかわらず全域をカバーしているのか?と思わせるほどメジャーなアルピコ交通の夜行バスに今回もお世話になります。


今回の縦走計画では緊張を強いられるルートが多数あり、少しでも心身のストレス軽減の為3列シートのグリーンカーにて。
しかし、私の座席の前に座ったうら若き中国人ギャルの容赦ないリクライニング全開攻撃と寝返り攻撃にて細切れの睡眠しかとれないという事態に。これから両脇斬れ落ちた岩稜の縦走路を歩くって言うのにー!
(インバウンドにはもう少し日本の所作を習得してから・・・なんなら検定試験を設けて、合格してから来日してほしいものです)

バスは途中2時間ほどの時間調整を挟みながら定刻通りのAM5:10に上高地バスターミナルに到着しました。

山岳遭難時の命綱である登山届用のポストはバスターミナルにあります。わたしは提出用、自分での携行用、自宅保管用と3枚は用意するようにしています。

9月とはいえ、名立たる名峰に囲まれた上高地の標高は約1500m。
凛とした空気の中、それぞれの登山者たちが思い思いに準備を進めます。こんな光景もまた登山の一部であり大好きな瞬間です。

バスターミナルから徒歩5分ほどで穂高連峰の核心部である奥穂から前穂へ連なる吊り尾根が見えてきます。
多くの山岳雑誌で目にする光景は、肉眼で見ると感嘆の声しか出てきません。ぜひともご自分の肉眼でご覧ください!

河童橋の脇を抜けると、「いよいよだな!」っと気合も入ります。

豪雪地帯である上高地は1年の約半分を積雪にて閉ざされていますが、その分蓄えた水の豊富なこと。
圧倒的水量と綺麗さだけでも目にする価値はあると思います。

上高地ビジターセンターを抜け横尾まで続く11kの林道を行きます。

上高地に隣接する小梨平キャンプ場は、日帰り入浴や豊富な物量を誇る売店を完備。キャンプ慣れした方からも「ここまで至れり尽くせりのキャンプ場はほかに見たことがない!」と言わしめる実力のキャンプ場です。
ここにテントを張ってベースキャンプとして付近の山々へ繰り出す方々の登山基地。


林道を進むこと約30分ほどで明神館に到着です。
上高地周辺のホテルへ滞在されている観光客の方々はここから左に折れ、明神橋を渡ったところにある嘉門次小屋と穂高神社を巡り上高地まで梓川の右岸を巡るハイキングルートが人気のようです。(2019年9月現在・湿地帯の上を歩く木道は整備中で作業用林道へとルート変更されています)

樹林帯の隙間からのモルゲンロート





天気は上々です

林道を黙々と歩いて、約45分で徳沢に着きました。

ここ徳沢には徳沢ロッヂ・徳沢園・徳沢キャンプ場とあり、宿泊施設は到底アルプスの懐深い場所とは思えないほど素晴らしいと評判です。
筆者は何度かキャンプ場にてお世話になりましたが、それはそれは大変居心地の良いキャンプ場で、ここにキャンプの為だけに来ても良いな~っと毎回思っております。徳沢ロッヂでは日帰り入浴も提供いただけるので長期滞在や下山後の後泊、登山前の前泊に最適なのです。

その昔は上高地牧場という名称で実際に放牧が行われいたキャンプ指定地。
天然芝が非常に心地いいんです。

こちらは小説「氷壁」での舞台となった徳沢園。
ソフトクリームはメチャうまです!

徳沢園脇を抜け林道をさらに進みます。

横尾山荘の建屋が見えてきました。

ここ横尾山荘は穂高連峰の懐である涸沢カール方面と槍沢を登り詰めた先にある槍ヶ岳、常念山脈の端に位置する蝶ヶ岳への分岐となる山荘です。この先の登山道はどのルートにおいても登山装備が無ければ入ることはできません。
:涸沢カールへの路 今季2回目の涸沢カールはどんな表情を見せるのか?

涸沢カールへと向かう横尾大橋。

実際に揺れる吊り橋です。

上高地・河童橋へと流れそそぐ梓川。

クライマーの聖地と称される屏風岩を左手に見ながら横尾谷を進みます。

本谷橋(ほんたにばし)が見えてきました。

この橋を渡ったところからは登山道の核心部と言っても過言ではない急登が始まります。

GWに来た時には未だここは雪の下でした。たぶん積雪は6~7mはあったと思います。

吊り橋が苦手な方用に水面近くにも橋が架けられています。

でもやはり吊り橋があるなら吊り橋を渡りたいですね!笑

核心の急登がスタートです。



急登の合間に見ることができる絶景。

足場はしっかりしているものの、左の斜面からの落石にビビりながら進みます。


登山地図などに必ず記載されている「Sガレ」に着きました。なぜこんな何の変哲もない場所が常に記載されているのか甚だ疑問だったのですが、ここに実際立ってみてその謎が解けました。

ここ「Sガレ」まで来ると、涸沢カールの全容が視界に飛び込んでくるんですね。

天空の楽園が目の前に迫ってきました。しかし、まだ午前中ではあるのですが、雲の湧きたちが早まりそうで気持ちばかりが焦ります。

見上げれば絶景。

ナナカマドの実が赤く染まり始め山の季節は秋の到来を告げています。

涸沢分岐に到達しました。右へ向かえば涸沢小屋、左へ向かえば涸沢ヒュッテです。

テント泊の受付が近い涸沢ヒュッテを目指し左へと歩を進めます。

荒涼とした岩稜帯にある可憐な花々に癒されながら涸沢ヒュッテはもうすぐそこ。

やっと着くか?

着いたーーーー!

涸沢ヒュッテに到着です。

かの有名なテラスはコチラです。

天空の楽園と称される涸沢カール。
すっきり晴れていれば大絶景なのですが午前10時だというのにだいぶ雲が下がってきてしまいました。未だ夏の空気が優勢で澄み切った青空にはならないようです。山側の雲の流れが以上に早い。そして明日は雨予報です。

休憩もそこそこにまずは本日の寝床を建てました。

穂高連峰の山頂部はすでに雲に飲み込まれてしまいました。

反対側の常念山脈方面はすっきりと夏空。穂高は山脈の向こう側である飛騨方面(日本海側)からの湿った空気の影響をもろに受けます。

涸沢小屋とその背後に聳える北穂高岳。やはり山頂部は雲の中へ。
:ついに憧れの穂高連峰へ 難易度険しさは折り紙つきの頂へ

数分の間で雲が上がったり下がったり。結局この後に穂高連峰の山頂部はその姿を現すことはありませんでした。そして先ほどからわたくしは、ある一つの思いを逡巡しております。
ここまで来たのに穂高連峰の一座にも登頂しないで下山するのか?
明日の天気は下り坂で早ければ今夜から崩れる可能性がある。
時刻は現在午前11時。雲が下りてきてはいるものの崩れる気配は今のところない。
いつ登るか?といったら・・・・・
今でしょう!

ここ涸沢カールから登山可能な穂高は奥穂高岳と北穂高岳です。奥穂⇔北穂の縦走もやってみたかったのですが、如何せん昼前の出発では遅すぎて無謀すぎます。奥穂はいづれ前穂高岳やジャンダルムと絡めての登山を計画したいので、今回は北穂高岳一座狙いで気持ちを固めました。
早速、北穂高岳への登山道が通じる涸沢小屋へと向かい、途中テント場を振り返ります。


北穂高岳登山道の入口。

大きな岩の転がる登山道をひた進みます。

天空の楽園=涸沢カールをもっと天空から見下ろすのもまた絶景です。
テント場が遥か眼下に見えるところまで短距離で一気に高度を上げてきました。所謂急登です。

涸沢カールからは見ることのできない北穂東稜。

鎖場などの難所もしっかりあります。

しかしそれなりにステップも多く、落ち着いてマーカーに忠実に歩けば難なく通過できます。

ただ、狭い場所での離合時は細心の注意が必要ですね。

痺れる場所です。

なんて・・・・・見た目ほどの斜度はありませんのでアスレチック感覚で通過できます。写真で「映える」(ばえる)ところというのは実はそんなに難易度が高い場所ではなくて、写真では全然「映えない」、なんてことなく見える場所が実は一番の核心部だったりします。

こことか・・・・
ここは正直怖かったです。足の置き場は大人の靴幅くらい。その横は切れ落ちているというよりも登山道がせり出しているので宙に浮いている感覚です。

垂直な鎖場を抜け

振り返れば涸沢カールのテント場が。

沸き立つ雲に撒かれながらもなんとか北穂本峰へ取り付こうとしています。


北穂南陵にあるテント場。

北穂分岐。あと200mです。

滝谷ドームを眺めながら

北穂高岳北峰山頂に到達です。


山頂直下にある北穂高山荘にも寄っていきます。

岩稜にへばりつくように建てられた山荘です。



小屋自慢のドリップコーヒーをいただきました。


小屋の奥からは槍ヶ岳へと続く稜線「大キレット」の展望が。8月に大キレット越えに挑戦するため槍を目指しましたが、初日に1時間当たり80mmを超す猛烈な豪雨に遭い撤退を余儀なくされました。ここもいづれ再挑戦したいと心に焼き付けげっざーん。

下山時の鎖場は斜面から体を引き離して足元を確認しながら下山しないと足の置き場に詰まります。

どこでどう間違えたのか?一瞬ルートロストして、ガレガレの沢に迷い込み足元が崩れながらの下山となってしまいました。

なんとか登山道に復帰後も大きなゴロタは浮石だらけ。一瞬たりとも気が抜けません。

やっと何があっても帰ることのできる距離感にテント場と涸沢ヒュッテを捕らえました。

15:30 無事にスタート地点の涸沢小屋へと戻ってきて、小屋名物の「煮込み」と「生中」でお疲れさん会です。

テント場に戻ってくるとやはりホッとします。

夕方には今日一番の穂高フォトが撮れました。

こんな景色の中、夕食の準備。

最近嵌っている、アルファ米を如何に贅沢な食事にするか?の挑戦。
今回は「田舎ごはん」を用意しまして、ここに安定の美味しさを誇るアマノフーズ謹製「畑のカレー」シリーズを。田舎ごはんはきのことやタケノコの炊き込みご飯なので“だし”“きのこ”“タケノコ”と、カレーに合わないわけがない具材が満載です!
お湯を沸かすだけで出来るのですから本当に便利な世の中です。

これはなかなか美味しかったです!


こんな景気も調味料の一部なのですが・・・・・
かくして涸沢カールから登る穂高連峰の頂。北穂高岳登頂は無事に山行を終えることが出来ました。穂高連峰は噂に違わぬ岩稜の峰々でその登山道も険しい場所が大半を占めますが、それでも登山者を魅了してやまない峰々が放つオーラの一端を感じることが出来ました。来シーズンへの宿題は残りましたが、一気に片付いてしまっても面白くないのが登山。穂高を縦横無尽に歩けるだけの身体を作ってまた挑戦したいと思う、そんな山行でした。

雨の下山。奥穂登頂ならずの無念は上高地で贅沢後泊編はまた後程。。。
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